ベースのチョッパー奏法とスラップの弾き方の違いとは?

今回は、ベースで「目立つ」奏法の一つと言える、チョッパー奏法とスラップ奏法の弾き方についての記事を書いていきます。

少しでもベースの事を知っている人であれば、どちらも聞いたことがあると思います。

どちらも同じ意味で使われているようで、言い方の違いだけでは、と考えている人もいるでしょう。

結論から言ってしまいますと、その通りで、どちらも同じ奏法です。

ここでいきなり結論付けてしまうと、わざわざ記事にする意味がありませんので、「スラップ奏法はいつ、どのように始まったのか?」「スラップはなぜチョッパーと呼ばれているのか?」具体的にこれらについて書いていきます。

よりスラップ奏法への理解を深めていただき、ベースの技術力の向上に貢献できたら幸いです。

ベースのチョッパー奏法とスラップの弾き方の違いとは?

スラップ奏法はいつから始まったのか

そもそも、スラップ奏法とは、どんな演奏方法の事を示しているのでしょうか。

何となくで理解している人が多いと思いますので、一度確認しておきましょう。

スラップ奏法は、もともとコントラバス(ウッド・ベース、アップライト・ベース)で使われていた奏法です。

弦を弾く右手の人差し指で、弦を強く引っ張って叩くことで、ネックにバチっとぶつける、あるいは手(の指)で弦を叩いて、強い音を出す奏法の事を指していました。

低音部の音程に、パーカッシブな打楽器の要素も加えることが出来ます。

では、エレクトリック・ベースを使って、ポピュラー・ミュージックにこのスラップ奏法を取り入れたのはいつ、誰なのでしょうか。

これには諸説あって、現在のところは、1970年代のブラック・ミュージック、特にR&BやFunkといったジャンルのベーシスト達が同時多発的にやり始めたのではないかと言われています。

その1人として有力なのが、Sly&The Family Stoneに在籍していたベーシスト、Larry Grahamです。

当時の彼の演奏を見た日本人は、スラップ奏法を知らなかったため、「親指ベース」などとも呼ばれ、いち早くプレイに取り入れようと盛んに研究されました。

Sly&The Family Stoneは実験精神溢れるファンキーなバンドでしたので、彼がその奏法を始めた、と言われても納得がいきます。

スラップがチョッパーと呼ばれる理由

先に書いたとおり、1970年代の日本のロックやフュージョン系のミュージシャン達は、「スラップ奏法」という言葉すら知らなかったので、初めは「親指ベース」と呼ばれていました。

しかし、単に親指でベースを弾く、という奏法はすでにやっているベーシストがおり(代表的なのは細野晴臣氏など)、また、スラップ奏法ではプルの時に人差し指なども使うため、単に「親指ベース」という呼称は、あまり良いとは言えない状況でした。

このような中で、1975年にTin Pan Alleyというバンドが、「チョッパーズ・ブギ」という楽曲を発表します(アルバム「キャラメル・ママ」収録)。

このTin Pan Alleyのベーシストが、細野晴臣氏です。

彼がこの楽曲で披露した「スラップ奏法」は、これで一躍有名になったため、その楽曲と、当時安定していなかったこの奏法のネーミングとして、一般的に定着したそうです。

おそらく、「チョッパーズ・ブギのベースの弾き方」と言う話がどこかで変化・短縮されていき、「チョッパー」となったのでは?と思われますが、その辺りの確実な事は不明のままです。

以上の経緯からも、誕生の時から混同しやすい状況だったようです。

また、この逸話からもすぐに想像が付くと思いますが、「チョッパー奏法」は、日本で生まれた独自の言葉(和製英語?)ですので、基本的に外国の方には通じません。

でも、あえて「スラップ」と「チョッパー」を分けてみる

ここまで書いてきた通り、「スラップ奏法」と「チョッパー奏法」は、言い方の違いだけで、同じ奏法を指しています。

でも、あえて分けてみるとするならば、と言う話をしていきます。

個人的な見解ですので、こんな考え方も出来るんだな、くらいに留めてください。

スラップ奏法では親指を立てる方法と、親指を下げる方法の2種類があります。

どちらがやりやすいか、クセのようなもので、プレイヤーによって異なります。

1980年代までは、親指を立ててスラップをする人が圧倒的に多かったのですが、1990年代に入ってRed Hot Chili Peppersが日本でもブレイクすると、そのベーシストであるFleaの親指を下げる奏法を真似る人たちがどんどん増えてきました(余談ですが、同時に”ミクスチャー”という言葉も流行り出した気がします)。

また、それと同時に元々の呼び名であった「スラップ」という言葉が浸透して来たように思えます。

それまでは、どちらかと言えば、「チョッパー」と呼んでいる人の方が多い印象でした。

故に親指を立てる奏法が「チョッパー」、親指を下げる奏法が「スラップ」と、分けて表現しても良いのかもしれません。

しかし、先ほど書いた通り、他の国では「チョッパー」では通じません。

このような分類の仕方は、日本だけならば通用させることができるかもしれません。

ベースの指弾きとピック弾きの違いとは?

さて、ここからは、ベースの弾き方について書いていきます。

エレクトリック・ベースは、形状こそギターと似ていますが、ギターとの役割の違いから、ベース独自の奏法が開発されてきました。

しかし、やはり主流と言えるのは、指弾きとピック弾きでしょう。

それぞれの違いについて、以下で考えていこうと思います。

ピック弾き

ピックを用いて弾く奏法です。

ピックはギターでも使いますが、もちろんベースでも一般的に使用されます。

ベース用のピックは様々な形がありますが、ギターと比べると大きめで、「オニギリ型」よりも「正三角形型」がポピュラーになっています。

ピッキングの仕方は、弦を下に弾くダウン・ピッキングと、弦を上に弾くアップ・ピッキングがあります。

これを上下に繰り返して弦を弾くオルタネイト・ピッキング、そしてフレキシブつにダウン、アップを組み合わせていくスイープ・ピッキングがあります。

オルタネイトやスイープは難易度が高いので、十分な練習が必要です。

・ピック弾きのメリット

ピック弾きの最大のメリットは、強いアタックによりドライブ感が得られる事です。

特に8ビートのルート弾きを、すべてオール・ダウン・ピッキングした場合、指弾きやオルタネイトなどの弾き方に比べ、力強さとスクエアなリズムを生み出す事が可能です。

もちろんその他の奏法でもこのようなドライブ感を出せるベーシストはいますが、その人独特の弾き方であったり、その奏法を熟練させる必要があります。

バックをガンガン牽引していくドライブ感を出すには、オール・ダウン・ピッキングが最も向いていると言えます。

・ピック弾きのデメリット

ピック弾きのデメリットとしてよく挙げられるのは、指弾きのような細やかなニュアンスが出しにくい点です。

簡単に説明すると、ピックでバラッドのような静かな楽曲を弾く場合、アタックが強く出過ぎてしまい、なかなか困難です。

また、ピック弾きでは正確に刻むようなリズムに向いていますが、微妙な「モタリ」「ハシリ」を演出するには、指弾きの方が向いています。

ファンク系のような、ベース・サウンドに特徴がある音楽でも、ピック弾きには不向きと言われがちですが、もちろんそれは一般的な理解であって、ピックとミュートの技術を活かして、独自のグルーヴを出しているベーシストも数多くいます。

やはり経験と技術、そして自分自身のスタイルの確立が大事です。

ピック弾きの一番のデメリットは、スラップ奏法への切り替えが非常に難しいという事だと思います。

ピック弾きをしながら、瞬時にスラップ奏法も用いるというのは非常に困難です。

しかし、ベースは、ギター以上に様々な弾き方が開発されて来ている楽器ですので、ピックでスラップをしたい人は、挑戦してみても良いかもしれません。

指弾き

指弾きは、文字通り指で直接弦を弾く奏法です。

ベースを演奏する際に、単に「指弾き」という言い方をしている場合は、基本的にスラップ奏法は含みません。

2本の指で弦を弾く場合は2フィンガー、3本の指で弦を弾く場合は3フィンガー、親指以外の指全てで弾く場合は4フィンガー(4フィンガーはほとんど使われませんが)と言います、

一般的には2フィンガーが一番多く、弦を弾く方の手の人差し指と中指を交互に使って弾いていき、親指をピックアップに乗せて安定させます。

3フィンガーは人差し指、中指、薬指を使い、4フィンガーは人差し指、中指、薬指、小指を使います。

3フィンガーはベースよりも動きが多いギターのアルペジオでよく使われる奏法です。

・指弾きのメリット

指弾きのメリットは、何と言ってもベースだけあれば、すぐに弾ける事でしょう。

ベースの弦に対するアタックが、自分のイメージを直結させることが出来るので、ピックよりも弾いている実感があります。

つまり、アタックやリズムの細かなニュアンスを表現できるわけです。

ピックを普段から使用していると、ピックの形状・厚みなどが異なると弾きにくく感じる場合もありますが、指弾きであれば、「自分のイメージと直結した弾き方」ですので、その心配はありません。

もちろん、ベーシストの技量や個性が最も出やすいのではないかと思います。

・指弾きのデメリット

指弾きのデメリットは、指弾きに慣れていないと、指に水ぶくれを作ってしまいやすい事が挙げられます。

自分も最初の頃は、押弦している左手の人差し指、中指、薬指はもちろんのこと、弦を弾く右手の人差し指と中指も水ぶくれを作っていました。

ベースを弾いたことがないと、押弦している左指は数分するとすぐに痛くなってしまいます。

また、金属である点や、ギターの弦よりも太い、などの理由から、右手の指弾きでも痛みが強く残ってしまいます。

べースに慣れていない時期は、練習のペース配分に十分注意して下さい。
また、ピック弾きのようなドライブ感を出すには、相当の熟練が必要になります。

・まとめ

以上、ここまで読んでいただければ分かる通り、ピック弾きでも指弾きでも、それぞれメリット・デメリットがあります。

また、演奏する音楽のジャンルや楽曲、楽曲中のフレーズでも、どちらの奏法が向いているのか、という判断も必要になるでしょう。

どちらも弾けるようにしておくのが一番ですが、まずは弾きやすい方や、憧れのベーシストがよく弾く奏法から始めてみるのが良いと思います。