Gibson Hummingbirdの音の特徴とは?

Gibson Hummingbirdは、1960年に発表されたアコースティック・ギターの機種です。

Gibsonは、エレクトリック・ギターだけでなく、アコースティック・ギターにも定評があるメーカーで、当時から力を入れていました。

その後、Hummingbirdの上位機種として、1962年にはGibson Doveが発売されています。

Hummingbird=ハチドリ、Dove=鳩で、ピックガードにはその美しい装飾が施されています。

今回はHummingbirdについて書いていきます。

Gibson Hummingbirdの特徴は?

世界的なフォークブームだった1950年代後半、MartinのD-18やD-28などが人気でした。それまでGibsonはラウンドショルダー中心でしたが、より音量を出せるスクエアショルダー型のギター、Hummingbirdを投入しました。

Gibson Hummingbirdは、その美しい装飾としっかりと作られたアッセンブリーが魅力のアコースティック・ギターです。

ボディは赤いチェリー・サンバースト、そしてピックガードにはハチドリの装飾、というのがHummingbirdの特徴で、高級かつ上品なサウンドを想像させます。

ボディの形状は、Gibson初のスクエア・ショルダーのギターになります。Gibsonでは有名なアコースティック・ギター、J-45のスクエア・ショルダー版と考えていただければ分かりやすいかもしれません。

高域の伸びはサスティーンも良く、バランスの取れたサウンドはヴォーカルとの相性も抜群です。激しいストロークをしても心地よい箱鳴りでロック系のアーティストに人気があります。

J-45は、愛用ミュージシャンも多く、イメージが湧きやすいかと思います。何と言ってもBob Dylanが使っているので有名ですね。日本では奥田民生氏や斉藤和義氏などが使っています。

Hummingbirdの材は、トップがスプルース、サイド/バックとネックがマホガニー製となています。Gibsonの伝統的な木材の組み合わせはJ-45と変わりません。しかし音量的にはJ-45よりボリュームはあります。ボディーの大きさや形状、ブレイシング等の違いから来るものだと思います。Doveはサイド/バックにメイプルが使用されており、この点が大きな違いになります。

この違いにより、DoveよりHummingbirdの方が低音が強く、特にストローク中心のプレイで効果を発揮します。

ブレーシング(ボディ内部の力木)は、スキャロップド・トップ・ブレーシングになっています。一般に、きらびやかで跳ねるような感覚と言われています。

ネックは、握ってみると細く感じます。1960年代のGibsonは、ネックが細く作られた機種がとても多いです。これは年代によって変化していきますので、その違いを弾き比べてみても面白いでしょう。

指板にはパラレログラム・インレイ(平行四辺形型のインレイ)、ヘッドにはクラウン・インレイ(王冠型のインレイ)が付いています。このような装飾が細部にわたって施されており、象徴的なピックガードとボディのサンバーストと合まって、高級感のある美しいギターに仕上がっています。

ペグは、外殻を鉄板ではなく、堅牢なダイキャスト(鋳造)で作られたグローヴァー・ペグが採用されています。これにより、引き締まった音色と豊かなサステインを生み出してくれます。

Gibsonでは、ロング・スケールとミディアム・スケールがありますが、Hummingbirdはミディアム・スケールになります(口径のDoveはロング・スケールです。)。スケールは短いほどアタックが早い、とされています。

Hummingbirdはミディアム・スケールで弦のテンションを強くするため、ヘッドの角度がキツく、弦高も高く設定されています。

特にアコースティック・ギターを弾き慣れていない方は、テンションがキツくて弾きづらいと感じるかもしれません。

ネックはGibsonの中では細めなのですが、弾きやすいと言えるような細さではありません。またハイポジションにいくほどフレットの間隔はせまくなりますので、弾きにくさを感じるかもしれません。しかしローポジションではミディアムスケールのため、手が小さめな人でもコードは押さえやすいでしょう。国産のギターと比べ弦高が高く設定されているため、最初は弾きづらく感じると思いますが、長時間弾いていると手に馴染んできます。弾き込むほどに馴染んでくる・・・といった印象です。

しかし、ピックを持ってストローク中心に掻き鳴らすには、これくらいの弦高とテンションがないと、Hummingbird本来の「鳴り」を得られないでしょう。

長く弾き込むことで、自分自身も慣れてきますし、何よりギターが馴染んでくるようになるでしょう。美しいインレイや装飾がすり減ってくるのは残念ですが、逆にサウンドの方は、そうなって来てからが良くなる、そんな印象のギターだと思います。

Gibson製のアコースティック・ギターは、どの機種も低音に特徴がある、と言われています。芯があって厚みがあり、指弾きによる繊細な演奏よりも、ピックによるリズム・ストロークに適している、と言われます。

最も特徴的なのは、しっかりした芯のあるパワフルなサウンドでありながら、ヴォーカルの邪魔をしない、伴奏に適した音質を持っている点ではないでしょうか。

派手過ぎない音で、かつ低音域中心で確実に音を刻んでくれます。ギターにとって求められる歌を支える役割を十分に果たしてくれます。

音の特徴

Hummingbirdの音の特徴は、一言でよく「ハニー・トーン」と表現されます。

軽やかで若干乾いたような、耳障りの良い音質です。

中音域も良く出ており、特徴的な低音域と合わせて甘めなトーンになります。元々ヴォーカルを支えるように、音域がぶつからないよう設計されているため、豊かな「鳴り」にもかかわらず、多くのギタリストに愛用されており、ギター・ヴォーカルの方にも使用者が多いです。

一方で、ロー・コードをピックでストロークすると、Gibsonのアコースティックらしく、骨太でハードな「鳴り」を出すことが可能です。

音量的にも比較的大きめで、コード・ストロークでは骨太なサウンド、アルペジオではその甘いトーンが他楽器を干渉せず、しかしアタックのニュアンスはしっかりと主張してくれます。

よりアルペジオのサウンドを追求するなら、Doveの方が良いかもしれません。Hummingbirdはあくまでもアンサンブルのためのアルペジオ、という活用が向いていると思います。

指弾きでは、スクエア・ボディのためにJ-45と比較して倍音成分が多く(もちろん他の要因も絡んできます)、ボディの共鳴も加わって、空気感を含んだ甘いサウンドになります。これはHummingbird特有のサウンドでしょう。

アンサンブルを邪魔しないハニー・サウンドは、決して音が埋もれてしまうわけではありません。

自然に他の楽器に馴染みながら、詳細なアタックも残せるので、良くも悪くもプレイヤーの演奏力次第で表現の幅が生まれるギターと言えます。

また、現行のモデルには、L.R.Baggsのピックアップが取り付けられていて、原音に忠実でクリアーなサウンドを再現してくれます。

ライブやレコーディングなどでアコースティックを生音出力させない場合、PAやミキサー直結とはせずにL.R.Baggs Para Acoustic D.I.や、BossのADシリーズなどのプリアンプをかませば、Hummingbirdの生の魅力を損なわなずに出力可能なはずです。

ハミングバード愛用ミュージシャン

Gibson Hummingbirdの愛用ギタリストとして最も有名なのは、The Rolling StonesのKeith Richardsでしょう。

ストーンズの映画「One Plus One(悪魔を哀れむ歌)」(Jean-Luc Godard監督)の中では、2本のHummingbirdが登場します。

おそらくBrian JonesではなくKeithのものでしょう。HummingbirdはBrianよりもKeithに似合っている感じがします。

ストーンズの大ヒット曲「Angie(悲しみのアンジー)」のプロモーション用ヴィデオでも、Hummingbirdが登場します。

Keithの弾く「ストーンズのHummingbird」を聴きたければ、この楽曲を聴くのが一番だと思います。カントリー/ブルースの源流を米国南部に求めるストーンズの音楽性にぴったりなサウンドです。

余談ですが、90年代以降はMartinがメインになってきます。そのサウンドの違いも聴いてみてください。

その他、Led ZeppelinのJimmy PageやSheryl “Crow”などが使用している写真や映像もよく見るでしょう。

ボディの色と高級感ある装飾で、オブジェとしても美しいHummingbirdは、見た目ですぐにそれと分かるルックスです。

見た目だけで音を想像しがちですが、じっくりHummingbirdを聴き込んでみると、決して派手ではなく控え目ながらもしっかりキャラクターを持ったギターだと分かります。

Gibson Hummingbirdの種類

Gibson Hummingbirdは、1960年に発売されました。

それまでのGibson製のアコースティック・ギターは、丸い肩が特徴的なラウンド・ショルダーでしたが、四角い肩を持ったスクエア・ショルダーとして、HummingbirdはGibson初のモデルとして製作されました。

1960年の発売から約半世紀の間に、発売当初より多少使用の違うモデルもいくつか製作されています。

ブリッジ

1961年からJ-45に採用された「アジャスタブル・サドル」は、同年にHummingbirdにも採用され、ノーマル・サドルとアジャスタブル・サドルの2種類が流通していたようです。

アジャスタブル・サドルとは、アコースティック・ギターの弦高を調整できる機能を持ったサドルのことです。

両サイドにあるネジの高さを調整することで、全体の弦高を上下出来ます。

ボディー材の違うもの

Hummingbirdに使われている基本的な材は、トップはシトカ・スプルース、サイド/バックはマホガニーです。

生産性やコスト面を考慮して、サイドに合板を用いた個体も製作されたようです。

1962年、63年頃には、サイド/バックにメイプルを使用した個体が存在しました。この機種ではDoveに近いサウンドで、弦の鳴りを強調したような、アタック感のあるサウンドになっています。

その種類の中でも、アジャスタブル・サドル仕様のものであれば、さらに強力なアタック感を出せるリズムに特化したアコースティック・ギターになっています。

Gibson Doveは、Hummingbirdの後継・上位機種として、その2年後に製作されたモデルです。

Hummingbirdからの変更点は、サイド/バックにメイプル、スケールがロングスケールとなりました。装飾もやはり特徴的で、特にピックガードは鳩が描かれています。

ブレーシング

Hummingbirdのブレーシングは、シングルXブレーシングというタイプが採用されています。

ブレーシングとは、先ほども書いた通り、ボディの「鳴り」に影響してきます。

1971年頃に、ダブルXブレーシングに変更されました。

ブレーシングがより強固になったことで、Gibsonのアコースティックの評価で良く言われガチな、「鳴らないアコースティック・ギター」と言われる機種になってしまいます。

この頃からGibsonは暗黒時代と言われています。

ですので、1970年代に製作されたHummingbirdは、ヴィンテージ市場で出回っているのを見つけても、購入しないようにした方が良いです。

ダブルXブレーシングは、あまり評判が良くないようです。

現在では、Gibson Huston Shopにより、発売当初の60年代のモデルを再現した機種も多く製作されていますので、70年代ものをヴィンテージとして購入するよりも、こちらを購入した方がより実践的なギターに出会えると思います。

ボディカラー

Hummingbirdのボディ・カラーというと、あの特徴的なチェリー・サンバースト・フィニッシュが浮かんでくると思います。

1963年には、ナチュラル・フィニッシュも追加されました。こちらの方が、従来のアコースティック・ギターのイメージです。

現在ではもっと派手なビッグ・スカイ・ブルー・フィニッシュや、限定モデルとしてエボニーという濃いカラーのモデルもあります。また、金属パーツにゴールドを採用しているなど、かなり高級なイメージが意識されています。

個人的には、アコースティック・ギターというと、ブルースやカントリーを弾くのに適した楽器だと思うので、ナチュラル系のフィニッシュが合うと思います。

Hummingbirdのチェリー・サンバーストは、都会的モダン・ブルースのような楽曲に、見た目もサウンドもぴったり合うギターです。

 

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